熊本日日新聞コラム「きょうの発言」記事
▲「今日の発言」記事トップへ  ▲ホームへ


男女共同マル社会


 先日、散歩の途中、「ヒメジュオン」という名の野花を、うかつにも倒してしまった。花を起こそうと腰を降ろし、その小さなかれんな白い花を見た時、ふと取材で出会った一人の女性のことが脳裏に浮かんだ。
 彼女はDV(ドメスティック・バイオレンス)、つまり夫からの暴力が原因で離婚した、という。たまたま、その前の日にも夫の暴力から逃れるため、遠い親せきを頼って来たという女性の話を聞いたばかりだった。私の両親も、離婚した前夫にもそれ(DV)はなかったし、そうした話を身近に感じることはなかったので、考えさせられた。
 「こちらに来て、二キロ太りました」と言って笑う彼女の表情には、一見そんな出来事があったとは想像できなかった。しかし、華奢な体つきの彼女の姿をあらためて見た時、その辛い時間の経過を思わずにはいられなかった。
 家庭という外からは分かりにくい、ある意味密室での暴力とはどんなものなのだろう。対人間ということに限らず、暴力を持って自分の意志を通すということは、人として許されるはずはない。これまでも、そして、今もそのような行為が闇に葬られ、続けられているかと思うとゾッとする。
 昨年、ある新聞社の依頼で数カ月にわたり「男女共同参画社会」の意識調査をやった。「男女共同参画って?」と年配の男性からよく聞かれた。「共同参画、サンカク・・・」。説明する自分にだんだん自信がなくなっていったのを覚えている。
 まだまだ社会における男女の関係なんて△(サンカク)。「男女共同○(マル)社会」になるため、性別を問わずもっと努力する必要があると思う。あの彼女の第二の人生が素晴らしいものとなるためにも。

(平成15年(2003年)5月29日(木曜日) 熊本日日新聞 夕刊「きょうの発言」 文:有地 永遠子)

▲上へ

前の記事を読む  次の記事を読む