熊本日日新聞コラム「きょうの発言」記事
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子育てしやすい環境づくりを


 月一回発行のミニコミ紙の特集で「こいのぼり」を取材した。家々を訪ねると「こいのぼり」の主役である子どもは、故郷を離れた都会で若い両親と暮らしている、という所が多かった。遠くで暮らす孫に思いをはせ、祖父母が田舎で「こいのぼり」を上げていたのだ。そして主役はこのゴールデンウイークを利用して里帰り。「こいのぼり」とご対面ということに。
 この春、長男が予備校に入った。わが家は母子家庭である。経済的に決して楽ではない。予備校は全くの想定外だった。高校の担任からは私大も進められた。だが、私大×四年間より、国立大×四年間+予備校一年間の方が、親の出費としてはいくらか楽だろう、と一大決心した訳だ。今は教育ローンも充実しているが、子ども一人に好きな勉強をさせることすら大変な時代だ。昨年あたりから、私が住む人吉市でも「乳幼児医療費の就学前までの無料化」が議論された。周辺町村では、随分進んでいるようだが、人吉市の場合、厳しい財政事情などを背景に、実現は難しいらしい。
 思えば、下の娘は慢性の中耳炎を患って二歳から小学生になるまでほぼ毎日のように病院へ通った。就学前といえば確かに病気にかかりやすい。子どもの医療費も教育費同様、親にとっては大変な負担だ。
 五日の朝刊各紙によると、十五歳未満の子どもの数が二十二年連続で減少した、という。なぜ、子どもができないのか、子どもを産まないのか。少子化に歯止めをかけるには、子どもを安心して育てられる環境づくりも必要だろう。行政に甘えてばっかりもいられないが、ちょっぴり温かい支援も欲しいところだ。
 五月の空にこいのぼりが次々と泳ぐよう、子どもの数が増えますように。

(平成15年(2003年)5月8日(木曜日) 熊本日日新聞 夕刊「きょうの発言」 文:有地 永遠子)

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