熊本日日新聞コラム「きょうの発言」記事
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人吉球磨の歴史を観光に


 人吉球磨に今年、新しい音楽が誕生した。「KUMAKOI六調子」という。これは同地方で今日まで歌い継がれてきた代表的な民謡「球磨の六調子」を、現代風にアレンジしたもので、高知の「よさこい踊り」風にノリの良いダンスもつけた。
 今秋、人吉球磨で開かれる県民文化祭ではこの曲を使ったダンスバトル大会が企画されている。今後さまざまなイベントに登場。将来、牛深の「ハイヤ踊り」や火の国まつりの「おてもやん総踊り」のようになるだろう。観光面でも楽しみだ。
 観光といえば、人吉球磨の観光キャンペーン「旬夏秋冬」も定着してきた。中でも、二月から三月にかけて開催される「人吉球磨はひなまつり」は、冬から春にかけての観光の目玉となってきた。毎年、郡市各地の繁華街や観光施設などにひな人形が飾られ、観光客の目を楽しませている。
 ところで、最近、私は愛犬を連れてよく人吉城跡を散歩する。以前は草木がうっそうと生い茂り、昼間でも一人では怖いくらいだった二の丸、三の丸もきれいに整備されている。
 中でも、人吉市街地を一望できる三の丸からの眺めは絶景。そこから、球磨川側の御下門に下る石段には、楔状の石切りの傷がくっきりと残る。当時の石切り場や、築城の様子に思いをはせるのが、私は好きだ。
 人吉球磨地方は、この城を造った相良氏が、鎌倉から明治にかけて約七百年間も治めていた。そうした歴史はいくら巨額の資金を積んでもつくることはできないし、どんなリゾート地やアミューズメントパークにもまねできない財産だ。そうした歴史や文化財を生かした、人吉球磨オリジナルの観光がもう一つ、生まれてもよさそうな気がする。

(平成15年(2003年)4月24日(木曜日) 熊本日日新聞 夕刊「きょうの発言」 文:有地 永遠子)

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