熊本日日新聞コラム「きょうの発言」記事
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人吉球磨の「元気」紹介


 先日、私が発行している情報誌の創刊三周年記念読者パーティーを開いた。創刊時からすると発行部数も二倍になり、雑誌に登場いただいた地域の方々も三千人を超えた。ここにきてようやく地元に定着してきたのかな、と感じている。
 雑誌を発行した理由はいくつもあるが、一番の理由は私がこの人吉でグラフィックデザイナーとして独立したことがある。しかし、なかなか思うようにいかなかった。印刷物や看板などの制作にデザインが必要だ、ということが理解してもらえない。いや、デザインに限らずソフトにお金がかかるという認識が、この地方ではまだまだ薄いのだ。
 それならば、デザインを必要とする町にしようと考えた。そうして取り掛かったのが、地元に密着した地域の人が主役の情報誌だった。人吉球磨には十市町村ある。知っているようで知らなかった隣町の情報を紹介しよう。あの町のおいしい店をあの人に教えよう。そのうちにきっと町も元気になるはずだ。
 町に活気が出てくれば、すてきな看板が欲しくなるかもしれない。イベントのポスターでも作ろうかということになれば、デザイナーとしての私の出番だ。そんな長期計画だった。
 時々、「お宅の雑誌は地域活性化に役立ちますね」と言っていただくが、そんな立派なことは考えていない。地域活性化には、そこで暮らす人々の日々の営みが安定することも重要だ。私がこの町で食べて生きていけることが、地域活性化に近づくことなのだ、と思っている。デザイン事務所を六年、雑誌を発行して三年。自分の仕事が生かせる町づくりをしたいから、今日も大好きな人吉球磨を歩いてたくさんの人に会い、「元気」を紹介していく。

(平成15年(2003年)6月26日(木曜日) 熊本日日新聞 夕刊「きょうの発言」 文:有地 永遠子)

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